概要
愛がなくなった結婚生活を続けるのか、それとも不倫の恋を選ぶのか。
家に帰って、思わず保健室で拓真に薬を塗ってもらったことを思い出した。結婚してから、夫以外の男性とそんなに親密になったのは初めて。
チーンチーン、夕食作りの時間だ。
20時、夫はブリーフケースを手渡し、ネクタイを緩めて部屋に入ってきた。唾液と精液の匂いを嗅いだようだが、考える間もなく、彼が夕食のために手を洗いに行ってしまった。無視する夫を見て、気持ちが冷めてしまった。
テーブルを挟んで座る。
「お父さん、今日は怪我したんだ」
彼は顔を上げなかった。
「大丈夫?」
「大丈夫、もう薬を塗ったから」
「うん、ならお風呂のお湯を張って」
夫が浴室に行った時、瑞希の携帯が鳴り、知らない番号だった。
「もしもし、どちら様でしょうか」
「北原さんですか、今日学校で誤って北原さんにぶつかった伊藤拓真です。急に電話したことをお許しください、お怪我の具合はいかがでしょうか」
「もう大丈夫です、今日のこと私も責任があります。本当に申し訳ないです」
「いえいえ、私のせいです。お詫びに、今週末にコーヒーをご一緒していただけませんか」
「あ、伊藤先生、本当に大丈夫です」
「東京大学金融学科を優等卒業生だと聞いています。聞きたいことがいろいろありますのが、よろしいでしょうか?」
「え、そうですか。ではお言葉に甘えて…」
「誰の電話?」
部屋から夫の声。
「ダンスの週末臨時授業」
なぜか、伊藤のことを彼に知られたくない。
夢の中は、薬を塗ってくれた伊藤の姿。
日曜日、おしゃれな衣装で約束の喫茶店に。
伊藤はすでにそこにいて、コーヒーも注文してた。立ち上がり、椅子を引く。
「昔は優等生で卒業したと聞いたが、どうしてこの道に進まなかったの?」
「卒業後すぐに結婚し、夫の仕事を支えるために専業主婦の道を選んた。」
「本当に残念です。私だったら、きっと妻が夢を追いかけるのを応援するよ。」
「残念なんで…」頭を下げ、飲み物を一口飲み、「伊藤さんも結婚したのか」
「そう思ってるの? あ、実はまだですね」プロジェクトで忙しく、元カノに『付き合う暇もない』と思われてたので、別れてからずっと恋愛は再開しない。」瑞希を見て、微笑んでいる。
瑞希は無意識のうちにストローを噛んでる。
「…まあ、最近、新しいエネルギーのプロジェクトが…」
短い沈黙を破った。
仕事の話になると、2人は折に触れて意見を述べ、気まずい雰囲気が和らいだ。
……
「瑞希、そう呼んでもいい?」
「え、いいよ」
「これからも拓真と呼んでくれ」
……
帰り道、思わず拓真の才能と優しさを思い出す。自分より8歳年下だが、実に大人びた魅力的な男。次の出会いはいつになるのだろう。
しかし、家に帰った瑞希はまだ雑用に追われないと。
「あの時、なんで専業主婦選んだ?今より幸せな人生を送れたはずのに!」
夫が帰ってきてから、勇気を出してみた。
「家事をするためにシッターを雇い、自分で仕事を探しに行きたい」
しかし、ただあざ笑って。
「夢でも見てんのか、お前はもう44歳、何できるの? 俺の給料が家計を支えるのは十分だろう。妻がまだ外で働いているのを同僚に知られると、面目が立たない。」
怒りしか感じない。
結婚してから21年、彼のために有能な主婦になり、持っていたはずの人生も失った。子供も大きくなっても、またこのまま家に閉じこもっているのか。
また拓真のことを思い出した。
怒った瑞希は家を出て、彼に電話をかけた。
「明日空いてるの?話したいことあるけど、他人に聞かれたくない…」
「え、いいよ。よければ、私の家でいいかな?他に誰もいないから」
電話を終えて帰宅し、ソファーに腰を下ろした。
夫は彼女の肩に手を置いた。
「まあ、怒らないで、空いた時間に好きなことを勉強しに行ってもいい。ただ、毎日家に帰ったら会えれば、安心して働ける。」
瑞希はその手を避けた。
「明日は買い物と踊りに行きたい。帰るのは少し遅くなるかも、明日一人で外食してくれないか?」
「わかった」
不満そうな顔をして、寝室へ歩いて行こうと立ち上がった。
翌日、瑞希は買い物をしていて、ランジェリーショップを見かけた。中に入りたかったが、横の棚に様々なセクシーランジェリーがかかっていて、少し恥ずかしくなる。ふと、友人がアダルトオンラインショップ「SP-DREAMER」を勧めていたのを思い出し、携帯で検索してみた。
彼女にとって、「SP-DREAMER」で売られているものは、今まで考えもしなかったものだ。恥ずかしながらも好奇心に勝てず、知らず知らずのうちにセクシーランジェリーを買っていた。
午後には商品が届くという、「SP-DREAMER」からのメールが来て、緊張と興奮の中、家に帰った。
午後4時、玄関のチャイムが鳴った。
「UPS急便です、お荷物が届きました!」
中身を誰かに見られるのを恐れて、急いで玄関まで歩いた。サインするとき、しっかりと梱包され、プライバシー保護には細心の注意を払い、品名が服と記入されているのに気づいた。
ドアを閉めると、瑞希は中のオープンクロッチ網ボディーストッキングを取り出した。着てから、鏡の中の自分を見て恥ずかしくなったが、これを着た自分を見た拓真の反応を想像し始めた。
「いやいや!こんな時に拓真のことを考えるなんで!」
手で頬を叩く。
しかし、夫が自分に興味を失った様子を思うと、再びそれを着て拓真に会う勇気が湧いてきた。
夜、瑞希は白いワンピースの下にセクシーランジェリーを着た。
拓真の家に着いた、瑞希はまだノックをためらっていた。一度この扉を開けたら、パンドラの箱を開けたようなものだと知ってた。しかし、開けても必ずしも良い結果につながらないと分かっていても、人は好奇心に駆られるものである。
しばらく迷った末に呼び鈴を鳴らすと、やがて扉が開いた。
瑞希は玄関に立ち、にっこりと微笑んだ。
「お邪魔します」
「どうぞ、」拓真は屈んでスリッパを取り出し、瑞希の前に置いて、「今朝買ったばかり、サイズは合ってるはずだと思って、履いてみて」。
拓真の優しさに甘えて、拓真の胸に飛び込んだ。